原子力発電100の用語調査報告書-要約

1.この調査の特徴

1-1  原子力を理解するための用語の認知度を探った。

いわゆる原子力発電に関するアンケート調査は従来から規模、内容等大変多岐にわたってなされているが、今回は言葉の理解がまず全てのスタートと言う認識にたち、原子力関係の用語について「知っているか」を問い、さらに「知りたいか」を問うた。もちろん「よく知っている」と答えたとしても、内容まではチェックしていないので、あくまで回答者の自覚によるが、答えやすい設問にしたため、ストレートに生活者の意識が探れたものと自負している。

 

1-2  広範囲でかつ適切な100の用語の選択。

100の用語を選択するにあたっては、原子力発電の全体にわたり網羅する必要があった。新聞やニュースなどで報道される用語から選択する方法もあったが、トピック的なものに偏る傾向がある。
そこで冊子「コンセンサス」(電気事業連合会発行)が、エネルギー全般の話から、原子力発電のしくみ、さらに廃棄物処理、安全性にいたるまで幅広く、さらにレベルも初心からある程度勉強している人まで対応するようにできていることから、ほぼ全用語を冊子からとり、2、3の用語は追加した。

 

1-3  NPOの立場を生かしたネットワークの活用。

生活者の視点からエネルギーを考えるNPO法人として「あすかエネルギーフォーラム」は2001年から、消費者同士が本音で語り合う「エネルギートークサロン」を全国で開催し、2007年で20回を数える。その結果自主的に勉強を続けるグループができ、全国にネットワークを広げることができた。
今回のアンケートもそのネットワークを活用し、557名の回答を得た。年代層も20歳代から70歳代と幅広く、偏りが無く、男女比(2:1)、勉強会等への参加の有無(約1:1)、県内に原子力発電所の有無(約1:1)とかなり良い形で回答を得ることができた。一般のアンケートに比べ、より深い自由回答や意見が得られ、また友人、知人のネットワークを活用したため信頼性の高いものとなった。

グラフ:男女比・県内に原子力発電所の有無

2.調査結果から見えること

2-1  認知度の乖離が大きい一般用語と専門用語。

全100の用語の「よく知っている」と答えた認知度の平均は約30%であった。1位~3位は「地球温暖化問題」(74.3%)、「原子力発電」(67.1%)、「京都議定書」(60.0%)と、「よく知っている」と答えた人が60%以上いるのに比べ、98位~100位は「TRU廃棄物」(4.3%)、「バックエンド積み立て基金法」(3.4%)、「クリアランスレベル」(3.2%)と、とりわけこれから重要となる廃棄物分野において認知度が著しく低かった。

グラフ:「よく知っている」用語ベスト3&ラスト3

2-2  「聞いたことがない」人がこんなに多い廃棄物に関する用語。

アンケートの質問は用語毎に「よく知っている」「聞いたことがある」「聞いたことがない」の3択であったが、グラフのような分野毎に各用語について「聞いたことがない」と答えた平均値をとってみると、原子力発電の廃棄物の分野が最も高く50%近く、エネルギー全般に関する用語の約3倍にもなる。廃棄物問題が今後重要であるとすれば、広報の役割も検討されるべきであろう。

グラフ:「聞いたことが無い」人がこんなに多い廃棄物に関する用語

2-3  勉強会へ参加すると認知度がぐ~んと増す。

「よく知っている」を認知度として、勉強会などへ参加したことがある人と無い人との差を見ると、「プルサーマル計画」で40.7%、「低レベル放射性廃棄物」で40.4%、「高レベル放射性廃棄物」で39.5%、「MOX燃料」で38.2%、「使用済燃料」で37.8%と勉強会に参加した人の方が断然認知度が高く、勉強会に参加することで認知度が高まることが確認された。

グラフ:勉強会へ参加すると認知度がグーンと増す

2-4   あまり知られていない制度、政策、機構―でも知りたい。

「よく知っている」を認知度の基準にすると、「原子力災害対策特別措置法」(15.1% 81位)、「原子力政策大綱」(9.5% 91位)、「原子力発電環境整備機構(NOMO)」(7.7% 95位)。「バックエンド積み立て基金法」(3.4% 99位)といずれもかなり低い認知度であった。
しかし、知りたい用語としてみると、「原子力災害対策特別措置法」は原子力の安全性の分野では第1位、「原子力政策大綱」はエネルギー全般に関する分野で第5位、「原子力発電環境整備機構(NUMO)」は廃棄物の分野で第2位、「バックエンド積み立て基金法」が同じく廃棄物の分野で1位であった。

グラフ:「よく知っている」と答えた割合表:知りたい順位

知らないけど知りたいという大きなギャップを埋めるのは今後のPRの検討課題であると思われる。

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3.調査を終えての感想

 

■原子力発電100の用語のうち、とくに認知度が低かった「原子力発電で生じる廃棄物」「原子力燃料サイクル」については、さらに国、事業者や専門家などによる情報提供や啓発が必要とされよう。生活者が正しく知るそのためには、見学など体験的な勉強の機会を拡大することも重要である。

 

■また、「原子力基本法」や「原子力政策大綱」のような国の政策等に関する用語をよく知っている人が非常に少なく、一方で知りたいという意向も高かった。自由回答からも、それらの知識・情報を得たいと言う要望が多く見られた。国および事業者に対して、エネルギーや原子力政策の情報・知識についての普及・啓発を求めたい。

 

■勉強会に参加したことがある人の用語の認知度が高いことから、あすかエネルギーフォーラムが全国でエネルギートークサロンを展開してきたことの意味が確認されたように思う。この調査の結果を生かして、言葉を共通の認識として、消費者が消費者の意識を探っていく上でも、さらに今後もエネルギートークサロンを展開していきたい。

 

■今後のあすかエネルギーフォーラムの活動においても、全国のNPOや生活者の組織、また事業者などさまざまな立場の方々と連携を深め、生活者と事業者のよきパートナーシップを築くことをめざしたい。

 

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*転載の場合はご連絡ください。
また調査報告書をご希望の方はあすかエネルギーフォーラム事務局までご相談ください。

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